適当に、その場をてくてくと歩き回った
しかし、犯人は夕方になってもまったく姿をあらわさなかった
『う〜ん……なんであらわれないのかしら?』
若菜が、無線の向こうでぶちぶちと文句を言い始めた
『オトリのアピールが足りないのかしら? ねえ、もっと目立つようなことをしてみて』
「ふもっふ……(と、言われても……)」
なにをすればいいんだ?
とりあえず、といった感じで踊ってみる
器用に短い腕と足を折り曲げ、ステップを取り、小躍りを始める
すると、陽子からダメ出しがきた
『なにやってんのっ? そんなちまちました踊りじゃダメよっ。もっと激しくっ! もっと情熱にっ!!』
「ふも……(むう……)」
そこで俺は、手を地面に着き、足を持ち上げて、激しく交差したり回転を始めた
激しい踊りとして有名な、ブレイクダンスというやつだ
以前、ミスリルの宴会で無理矢理覚えさせられたからな
『おぉ、やるじゃないっ。ああっ、いいわっ、そのスピン!』
陽子もすっかり興奮してきたようだ
だが、それでも犯人はあらわれなかった
『……う〜ん。あきらめないで、他にもいろいろとやってみて』
俺は踊りをやめ、公園のブランコに立ち、大きく揺らしはじめた
そして、その揺れが大きくなってきたところで、ブランコから跳躍し、くるくると空中で回転し、見事に着地してみせた
『あら、やるわね。いいわよ、そんな感じでどんどんやってみてちょうだい』
それならば、と次はシーソーに駆け寄る
そして、シーソーを細い平均台に見立てて、新体操の演技をしてみせた
さらに、公園の真ん中に立てられているポールをよじ登り、そのてっぺんに立って、
「ふぅもー!」
などと叫んでみたり
……しかし、これでいいのだろうか
なんとなく今の俺の行動が疑問に思えてきたのだが