「ふぅも」
俺はちょっと休憩することにして、その場に座り込んだ
すると、背後から怪しい気配を感じ取った
振り返ると、スキンヘッドでいかつい、いかにもな怪しい男がナイフを片手に近づいてきた
そして男は、忌々しげにつぶやいて、ナイフを構えて突進してきた
「くそう、ボン太くんがなんじゃい、ワレェっ!」
……ナイフの扱いは、どう見ても素人だ
俺は軽くそのナイフを振り払い、男の腕を取って、反対側にひねり上げた
「ぐあっ。いててて」
『やったわっ!』
今ごろになって陽子が茂みから飛び出してきて、その男の手に手錠をかけた
「えー、あなたには黙秘権はありません。さっさと動機とかなんでもいーから、最後に言いたいことをゲロしなさい」
すると、そのスキンヘッドの男は、観念したように、次々と語りだした
「……ワシは、以前龍神会の一員だったモンや。ところが、ある日突然ボン太くんの集団に襲撃をかけられての。その日に龍神会は潰れよった」
「ふもっ」
どこかで聞いたような話だな、と宗介は思った
「そして、ボン太くんにやられた責任は、戦闘員だったワシらに責任を押し付けられ、任侠の道から追い出されてしもうたんや。それで……それで、以来ボン太くんを見かけると、無性に腹が立ってきて……その……」
そう言って、涙ぐんだ
若菜陽子はその涙にさほど気にとめた様子もなく、
「そう、分かったわ。これでスッキリしたでしょ。さ、行くわよ」
「へい……」
スキンヘッドの男は、おとなしく連行されていった
END22 ボン太くんEND
「ふもっふ」
俺はそれを最後まで見届けてから、大事なことを思い出した
「ふもっふ!(しまった!)」
すっかり夕日も沈み、暗くなっていた
これでは、もうかなめに宝石を渡すのは間に合わないな……
「ふもっふ……」
だが、ポケットにしまっていた、さっきの切り裂かれたボン太くん人形を見ると、俺はそれでもいいか、と思った
これでボン太くんはもう安泰だしな
「ふもっふぅ〜、もっふる〜」
俺はそのまま勝利の凱歌をあげて、自宅のアパートへと帰っていった