手前の教室は、美術室だった
中に入ってみると、やはり水星先生がアトリエにいる
どうも、苦悩しているようだ。筆をもって、紙に殴り描きしている
「失礼します、先生」
そう言うと、水星先生はぜえぜえと荒い息を吐き、こっちを向いた
「む? 君は4組の……」
「相良宗介です」
「ああ、そうだったね」
先生は筆を横に置くと、改めてこっちを向いた
「で、なにか用かね」
「同じクラスの千鳥かなめを見ませんでしたか? このあたりにいたという目撃情報が入っているのですが」
「おお、灰色に染めたる稀有の象徴か」
「はい?」
「彼女のことだよ。たしか、狭間に見出される加速の世界へ旅立ったのだろう」
またも、妙な言い回しが始まった
だが、口調から察するに、先生は目撃したらしい
よく聞いてみることにしよう
「もう少し、細かく教えてくださいませんか」
「む。原子の真理を求めるのだな。よろしい。メダムの廃墟にうつる影に、分け目の道があった。それを排除すべく、慢欄の彼方へいざなわれたのだ。それには赤き虹がかもしだす、ラウスのごとく……」
「…………」
なるほど
要するに、千鳥は、