ショートショートの世界へ

なりたての悪魔





全てが闇に覆われた悪魔の世界

そこでは、15歳になったばかりの悪魔と、いかにも身分の高そうな一回り体の大きい悪魔が話していた

「さて、そちの悪魔よ。この世界では、15歳になると一人前の悪魔だ。そちは15歳になったのであろう。今から人間界に降りて、仕事をするのだ」
大きい悪魔がそう告げた
しかし、悪魔は首をかしげた
「悪魔の仕事とは、どのようなものでしょう?」
「人間の嫌がることをして、心を悲しみに変えるのだ」
「はは、ご冗談を……」
この返答に大きな悪魔は驚いたが、コホンと咳払いして、気を取り直した
「冗談ではない。さあ、やるのだ」
「私には無理です」
きっぱりと断られ、大きい悪魔は気を失いそうになった

「な……なぜ無理なのだ?」
「とにかく私には無理です」
「ええい、だからその理由を言えというのだ」
「私は今まで、人間がどういう生物なのかということを、本で学んできました。そしてしだいに、人間にはかなわないと分かったのです」
「おいおい、人間なんて力の弱いクズのようなものだぞ。一体何を学んだというのだ? 説明しろ」
「分かりました。まず、人間が住む地球です。
地球は太陽からの距離、海や大気の存在、気温の適度……。このような数々の奇跡ともいえる偶然を起こし、人間という生命体をつくりました。
ところが人間はありがたみを感じるどころか、生みの親、地球を己の欲望で汚し、荒らしていきます。そして緑は減り、海や大気は汚れ、挙句の果てには人間を守るためのオゾン層まで破壊する始末……。
さらに、人間以外の生命体、動物などを殺し、数々の種を全滅に追いやる。
時には人間同士が争い、他の生命体の迷惑も考えない。
これらを人間は長い年月をかけて行い、いまや地球は死にかけ状態です。
こんな人間の大悪事を越える悪事など、私には無理です。
どうか、お許しを……」