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〜おまけという名のエピソード





取材の日から2日後

どういう形であれ、テッサ大佐は理想とする、ミスリルたちの平和に準する生活模様を垣間見れて、ご機嫌であった
テッサはその取材内容を放送した番組をビデオ録画し、それを食堂のTVに流し、それを見ては、嬉々として眺めていた
……食堂内に居座っている隊員たちが怪訝な顔をしていたことに気づくこともなく

「そうそう、こういうこともしてましたねー。ふふ、わたしは楽しかったです」
「…………」
ビデオを何度も再生しては、その楽しかった日を思い返す

「クルツさんはどうでしたか? あの時の心境を振り返って」
テッサはクルツに向かって、マイクよろしくおしるこドリンク缶を突き出した
「何度も舌を噛み切って死にたくなった」

「……マオさんはどうでした?」
「花の香りで胸焼けしちゃったわ」

こういう風に、テッサは時折リポーターの真似をしては、食堂内にいたクルツやマオ、その他の隊員たちに向かってインタビューごっこをしていた



「……ところで、カリーニンさんはどうしたんですか?」
取材時に、演技として野ブタ狩りに森林地帯に赴いてから、それきり彼らの姿を見ていないのだ
この食堂の場でも、隊員たちに聞いてみたが、誰も知らないという

「……まだ野ブタ狩りに行ってんじゃねえか?」
クルツが冗談気味につぶやいた

「まさか、なあ……」
「ねえ……」
その場の隊員たちに、軽い動揺が走った

「……だ、だって演技はもう終わったんですよ。それに気づいていないなんてことは……」
だが、誰もそれを否定する者はいなかった
「…………」
「…………」
なんとも言いようの無い、沈寂

ぼそりとクルツがつぶやいた
「あのおっさん、生真面目だからなあ……」



同時刻 
<メリダ島> 森林地帯の奥地

絡み合う樹木と、視界を奪うような濃い霧に包まれた地帯
そこに、カリーニンたち一行が迷い込んでいた
「おいっ、人数が足りんぞっ」
カリーニンが、ついてくる隊員たちの頭数を数えてみたが、2人足らない
「ダメです。彼らは……やられました」
「くっ……」
悔しがっている間にも、重い振動が近づいてくる
そして不気味な鳴き声と、足音
「なんてことだ……」

2日前、彼らは野ブタ狩りのために、ここに赴いていた

その狩りは順調だったのだが、その途中、10万年に一匹と言われる体長5Mもあるキング・ブタと遭遇してしまった
体力、破壊力ともに最強といわれるそのキング・ブタと、彼らは2日間、かつてない死闘を繰り広げていたのだ


その死闘での、彼の最後の言葉

「くっ。こんな……ヤリ一本で、どう立ち向かえというんだべかっ」