崩れゆく理想郷

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崩れゆく理想郷 3


そのサンダー・トレインというアトラクションは、4両編成になっており、宗介とかなめは運良く、先頭車両に座ることができた

「意外とゆっくりですね」

「千鳥は左を注視していろ。俺は右を見ている。怪しいところを見つけたら言え」

「了解しましたー」

応答するその千鳥の態度は、完全に、はしゃいでいた

サンダー・トレインは、いきなりトンネルに突入していく

だが、その先はトンネルではなく、大きく広い洞窟で、その上に石を並べ、建物が建ち、それは舞台になっていた

遊園地のマスコットキャラであるボン太くんが、建物の窓から顔をのぞかせ、手を振っている。その繰り返された動作はロボットなのだろう

「あ、ボン太くんがいたー」

「……またあの奇怪な生物か」

と、そこで宗介は千鳥を見た

「おい、なぜこっちを向いている。お前は左と言っただろう」

「えー……。だって、こっち壁でなにもないですよ。そっち側のほうが見てて楽しいじゃないですか」

こいつ……

宗介は頭が痛くなるのを感じつつ、仕方なく自分が左を向いた

そして終わっても、結局このサンダー・トレインには、怪しいところがなかった

しかし、それより大変だったのは、左側に舞台があらわれては千鳥がそっちを向き、宗介が反対側を向いて、右側に出れば、そっちを向いて、こっちは反対側を向くという、そういう風に振り回されたことだった

「なかなか面白い演出ばかりでしたね」

「……首が痛い」

コキコキと首を鳴らしている宗介を、不思議そうに千鳥が眺めていた

(遊園地に来てから、全然いつもの千鳥と違うな。仕事一徹かとも思っていたが)

しかし、その滅多に見せない楽しそうな顔を見ていると、強くたしなめることもできないのだった



「次はあれに乗りましょう」

と、千鳥が指差したのは、遊園地で最も注目度の高い、ジェットコースターだった

「……あれの何が怪しいんだ?」

「え? えっと……ほら、あのトンネルですよ」

それは途中のコースにある、数メートル程度のトンネルだった。

「あそこになにか隠されているかもしれません!」

「…………」

そして半ば強引に、そのコースターに乗ることになった

今度は前から三列目の席で、まあそれでも見やすい位置にあった

そしてジェットコースターが、ゆっくりとコースに沿って、上昇していく

「……どこまで昇るんだ。高すぎるだろう」

「先輩、まだ半分しか行ってませんよ」

「…………」

固定されてるのは、イスとベルトだけだ

こんなので、本当に安全性が守られているのか?

ジェットコースターは、頂点にまで登りつめた。そして一気に角度が傾き、急降下していく

「きゃああ〜〜っ」

「うっ、うお……」

それはかなりの速度で、上下に揺さぶられ、カーブで重力が横に向けられ、さらに回転して……

半分行ったところで、また高くまで上昇していった

「まだあるのか……」

その先は、ようやく例のトンネルであった

ガコンと急降下していくと、そのコースターはトンネルの暗闇の中へと突っ込んでいった

「ひぃっ……」

その先でようやくジェットコースターが止まって、マシンを降りて出口に向かうと、写真の販売をやっていた

「あっ、先輩。あれ見て下さい」

「ん?」

それは、例のトンネルが背景になっていた

そしてジェットコースターに乗った客である千鳥と、目をつぶっていた宗介の姿がきっちりと撮られている

「先輩、目を閉じてましたね?」

「…………」

「トンネルの中をちゃんと見てないとだめじゃないですか。というわけで、もう一回行きましょう!」

「も、もう一回?」

しかし、有無を言わさず、千鳥は宗介の腕をずるずると、また並びに引っ張っていったのだった



ジェット・コースターには合計で三回も乗るハメになり、初心者の宗介には少しきつかった

飲み物を飲みながら歩いていると、ホラーハウスという、いわゆる『お化け屋敷』が目に入った

「先輩! 次はあれ行きましょう」

「…………」

しかし、宗介は今度は肯定しなかった

「……先輩?」

「いや、これはやめておこう。特に怪しいところもなさそうだ」

そう言って、ホラーハウスをスルーし、すたすたと先を行こうとする

「どうしたんですか? 怪しくないかどうかなんて、入ってみなければ分かりませんよ」

「しかしだな。俺の勘が言っているんだ。ここにはない、と」

そう決め付ける宗介の表情を見て、千鳥は悪戯っぽく笑った

「……ひょっとして先輩。怖いんですか?」

「…………」

その指摘に、完全に黙り込んでしまった

その態度で、より一層、千鳥の悪戯心が刺激された

「うわー、先輩、幽霊怖いんですかぁー?」

「……いや、別に」

「怖いんですよねー? 暗ーいところから、ヒュ〜、ドロドロって」

「なにか勘違いしてるようだが」

宗介は、お化けの仕草をする千鳥を冷たく見やって、言った

「そんな幽霊自体は怖くない。……俺が怖いのは、死の世界だ」

「え……?」

「いろいろな番組で立ち上げてるが、死んだ世界から死者が現れてくるというのは、俺のように憎まれるべき者からすれば、怖いものだ」

「…………」

警察は、一般的に恨まれやすい職業だ

呪い殺してやる、と死刑囚に言われる警官もいることはいる。

ひょっとして、相良先輩も、それを言われたことがあるのだろうか?

「……分かりました。ここはあたし一人で行きます。先輩はここで待っててください」

「ああ、頼む」

一人、千鳥がホラーハウスに入っていくのを見てから、宗介は近くの原っぱに座り込んだ

そうして、目をつぶってみる

目を閉じると、真っ暗な世界が姿をあらわし、自分という存在が希薄になっていくようだ

『やめて、ソウスケ』

いきなり、不意にあの声が、暗闇に響いてきた

頼むから、出てこないでくれ

気分が悪くなってきて、宗介は千鳥が出てくるまでの間、その原っぱの上でうなだれていた



すでに時刻は昼を過ぎ、泉川署交番でも、休憩と称して、クルツと恵那が談笑していた

「ほんとだって。日本庭園を眺めながら抹茶を楽しめる、下町ならではのルートがあってな」

「ふふっ。クルツさんって、本当に日本通ですね。クルツさんは、いつから日本に住み着いたんですか?」

「ん? ああ、四歳の頃だってよ。オレは覚えてねーんだけどな」

今日はさしたる仕事も無く、恵那の持参したクッキーをつまんでいく

「アメリカ生まれっつっても、記憶がねーと、郷土愛もねーや。へへっ、金髪で目立つよなあ」

「でも、綺麗ですよ。クルツさんの髪……」

「え……? あ、そ、そうか? へへっ」

その恵那の言葉に、少し照れたように、クルツはその金髪を指でいじっていた

「それじゃ、宿題あるから早めに帰ります。クッキー、全部どうぞ」

「ああ、そんじゃもらっとくよ。送ろうか」

「今日は明るいですし、一人で大丈夫ですよ。……いつも、ありがとうございます」

恵那が、丁寧にぺこりとお礼を言って、交番を出た

「いいって。好きでやってることだからな。んじゃ、またな」

「はい、また来ますね」

この気軽さが、恵那にとっては、とても心休めるものなのだった



ホラーハウスにも怪しいところは見当たらず、その後も五つほどアトラクションを探ってみたが、まったく収穫がなかった

朝からずっと歩き詰めで、さすがに二人も疲労を感じてきた

「あ、もう夕方ですよ。遅いですけど、昼食にしませんか?」

捜査に熱を入れて、昼食をまだ食っていなかった宗介は、空腹だった

「そうだな」

「じゃあ、あそこの休憩広場で食べましょうよ。わたし、お弁当作ってきたんです」

と、持参していたカバンをアピールしてきた

「……おい」

「え?」

「なぜ、お弁当を用意してるんだ?」

「どうしてって……コンビニのおにぎりじゃ味気ないじゃないですか」

「……遊園地の中にあるレストランで済ませればいいだろう」

宗介は、遊園地のパンフレットを広げ、食事のマークのついた場所を指し示した

「あ……」

このパンフレットは、課長から昨日もらい受けたものなのに、今初めてレストランの存在に気づいたようだった

(こいつ……アトラクションしか目に入らなかったな)

しかし、せっかくの弁当を台無しにするわけにもいかないので、希望通り、休憩広場の空いてるベンチで食べることになった

弁当といっても、小さめなので、それぞれがひざの上に広げて食べることができた

味は悪くないな

時々持参してくれる佐伯恵那の差し入れもなかなかのものだが、どうやら千鳥の料理の腕もいいようだ

「結構、美味いな」

「えっ、本当ですか!」

宗介の感想に、千鳥は嬉しそうに喜んでいた



「……なあ」

宗介は、食事の途中で千鳥に話しかけた

「千鳥は、どうして警察に入ったんだ?」

「え……」

宗介から、身の上話を聞かれるとは思わなかったのか、一瞬戸惑ったようだった

「いや、別に話したくないならいいんだが」

「……わたし、小さい頃に住んでいた所って、近くに交番とか無かったんです」

「ほう」

「それで、夜は家の外を歩くのが怖くって。でも、小学の低学年頃に、新しく交番が建ったんです。そこにお巡りさんも立っていて、それだけなのに、すごく安心できて……」

子供にとって、身近な正義の味方は、警察官になるのだろう。その存在が、子供ながらに安心感を与えるものだ

「そのお巡りさんって、制服とか、かっこよく見えて。そこに派遣されていたお巡りさん、二十代くらいの若い男の人で、優しい笑顔をいつも見せていたんです。登校途中に通りかかるたびに、向こうから挨拶とかしてくれて」

自然と、千鳥は弁当の手を止めていた

「いつの間にか、月に何回かだけ、交番に遊びに行くようになっちゃって。今考えれば、仕事の邪魔だったかもしれないけど、そういう風な嫌な顔は見せてなかったから。へへ……」

「交番は地域とのふれあいが主任務でもあるからな。そういうのは気にするな」

「そうですね。そしたらある日、ニュースで、警察の偉い人が、汚職とかをして捕まったのを見たんです」

警察でも、中には犯罪を犯してしまう人もいなくはない。それは今でも起こり得る現状だ

「そのニュースが、当時のわたしには、すごく不思議だったんです。それで、あの交番に行って、あの若いお巡りさんに聞いたんですよ。どうして、警察なのに悪いことしてるの? 捕まってるの? って」

「大胆だな」

宗介は、その子供ながらの行動に、少し笑った

「ええ。お巡りさん、困った顔してました。そして、あたしは最後にこう言ったんです。『もう警察が悪いことしないように、よく忠告しておいてね』って」

子供にそう言われてしまったら、警官の面目も立たないな

「そしたらそのお巡りさん、悲しそうに、こう言って謝ったんです。『ごめんね。僕の力じゃ、上に強く言えないんだ。ごめんね』って……」

子供には、任せろって言っておけばいいのに。馬鹿正直な警官もいたものだ

「あたし、それ聞いて、思ったんです。警察にも力関係があるのなら、それを無くしてしまおうって。あたしが警察の偉い人になって、変えてしまおうって」

「…………」

「あ、もちろんそんな子供っぽい動機だけじゃありませんよ。犯罪は、時代とともに、手段や動機が年々変化しています。ですが、警察はそれに対応しようとする動きが遅いです。固定された法律に縛られて、新しい犯罪に振り回される……。最近になって、ストーカー規制法とかそういう動きを見せるようになってきましたけど」

そう語る千鳥の目には、いつも見せる真剣なものが込められていた

「でも、もっと根底から、警察にも改革が必要だと思うんです。だからわたしは、警察の上を目指しているんです」

だが、千鳥は急にしぼんだ様に、うつむいた

「もっとも、先輩には、そんなのは思い上がった夢物語だと思うかもしれませんけど」

「いや……」

宗介は、前を向いたまま、言った

「俺も同じだ。警察にも改革は必要だと思う。そして千鳥になら、それができるかもしれないな」

「え……」

「頑張れよ。一般に、女性警察官の採用倍率は三十倍近くといわれ、全体的にも警官人数は男性より圧倒的に少ない傾向にある。その中で数少ない女性がトップあたりに立つのにいろいろと苦労するだろうが、自分の意思を貫いていけよ」

そう言って、宗介は千鳥の背中を、ぽんと叩いた

「…………」

その叩いてきた手が、千鳥には無性に、暖かく感じた

人に、自分の夢を応援されたのなんて、初めてだった

本来なら子供の歩む道を応援する立場である両親は、娘であるかなめに、無関心だった

娘がなにをしようと、関わってこなかった。甘えさせることも、励まされることもなかった

一般に憧れる職業である警察官になる、と言っても、それでも関心を示さなかった両親。

そしてエリート道を進むわたしを、大学の同級生は嫉妬の対象としか見てくれず、警察学校でも、ライバル心むき出しで遊園地とかに誘う友人もいなかった

その千鳥が今、心から自分の信じる道を応援されたのだ

それが嬉しくて、たまらなかった

「……相良先輩」

「なんだ?」

独り言でつぶやいたつもりが、宗介の耳に入ったらしく、聞き返されて、千鳥は慌てた

「え。あ、その。……わたし、まだ研修の身ですけど、今、警察官として足りないのはなんですか?」

「そうだな。千鳥は、もう警察官として必要な知識や体術はできている」

「そう、ですか?」

「ああ。だが、まだまだ経験が足りない。だから、いろんな部署に積極的に取り組んで、その足で、その目で日々学んでいけばいい」

「はいっ」

初めて素直に、返事できたような気がした



昼食を食べ終えて、二人は弁当を片していく

「あの、先輩」

「なんだ?」

「先輩のほうは、どうして警察に入ったんですか?」

千鳥は、宗介にされた質問を、逆に返した

「俺か?」

「はい。先輩は警察に入って、なにがしたかったんです?」

「……ある人に会うため、だな」

それは、千鳥にとって意外な答えだった

「それって、どういう意味ですか?」

「俺は、個人的な事情で、ある二人を探していた。一人は、お礼を言うために。俺を救ってくれた、恩人にな」

「……もう一人は?」

「そいつを、ずっと探していた。どうしても探し出すつもりだった。そのために、より多くの情報を手にするために、最も情報網の多い警察に入ったんだ」

「今でも見つからないんですか? その人は」

「……警察に入って、すぐに資料室でそいつの記録を探した。そうしたら、見つかったよ」

「よかったじゃないですか。会えたんですね」

「いや。そいつはな、死んでいた」

「……え?」

警察に入ってまで、探していた人が、すでに死んでいた?

それって、かなりショックなことを聞いてしまったのではないだろうか

「あ、あの……」

なにか言葉をかけようとすると、宗介はふっと小さく笑っていた

「……先輩?」

「記録でそれを知ったとき、俺はどんな顔をしていたんだろうな……。がっかりしたのか、喜んでいたのか」

「な、なに言ってるんですか? ずっと探していた人が亡くなっていたなんて、悲しいに決まってるじゃないですか」

「いや、違う。こう思ったんだ。『あの人が、約束を果たしてくれたんだ』、と」

「…………?」

千鳥には、宗介の言っていることが、さっぱり分からなかった

宗介が警察に入ったのは、意外なことに、人探しのためだった

しかし、それはかなわなかった。彼が警察に入ったときには、すでにその探し人は亡くなっていたのだ

それならば、とても悲しむべきことだろう。だが彼にとっては、そうではないようだ

宗介の過去をまったく知らない千鳥にとっては、これ以上は理解できないものだった

この話題はこれまでにして、しばらくは満腹になった身体を休めることにした



その休憩広場の前には、ショッピングエリアとなっていて、いろいろな趣向を凝らした外見のお店が並んでいた

二人はベンチに座ったまま、それを眺めていた

「たくさん、お店がありますね」

「ああ。客は、品選びに、さぞ苦労するだろうな」

しかし、その買い物をする子供達やカップルは、そこの商品を眺めるだけで楽しそうだった

その商品はお菓子とか、キーホルダーとか、土産になるものばかりが揃えられていた

その中には、やはり遊園地のマスコットキャラであるボン太くんを形にしたものが多い

「ですね。あんなに商品が多くちゃ、お店の人も忙しいですね。商品の搬入とか、大変そう」

「…………」

すると、急に宗介が黙り込んで、それからうなだれた

「……そうか」

「どうしたんですか?」

「分かったぞ、銃器密売取引場所が」

「え?」

この会話の流れから、どうしていきなり分かったのだろう?

すると、宗介は一度苦々しく顔をしかめてから、説明に入った

「よく考えれば、すぐに分かることだった。……まず、遊園地は娯楽施設であり、一般的に夢を提供するサービス業だ。人目を気にして、警官が表立って捜査されるのを避けるくらいだからな」

それは、例えると子供向けの戦隊ショーのようなものだ。ヒーロー戦隊のスーツの中が、バイトのただの男とバレてはならない。

実際に休憩中、スーツを脱いでいるところを子供に目撃され、給料がもらえなくなってしまったという話がある

このサービス業は、夢を壊さないことが第一なのだ

「商品の搬入は裏作業だ。店側としては、売り切れにならないように、開園前から余裕をもって品数を揃えてるんだろうが、この人の出入りの多さでは、品切れになることもあるだろう」

たしかに、天井近くまで積んだクッキーの箱とかが見える

「なかには、店共通のグッズもあったな。ボン太くんキーホルダーとかいうやつは、割とどの店でも取り扱われている」

「まあ、そうですね」

「そういう場合は、切れた品物はそこから補充すればいいんだろうが、店と店の間には、通路があり、当然客がいる。また、その店だけの商品を外部から補充しようとしても、その作業は人目についてしまう」

「その補充する作業が、客の夢を壊すから、人目につくのはまずいってことですか?」

「ああ。園内スタッフは、アトラクション担当以外はあまり外では見かけないしな。開園中に、途中で商品を補充するためには、客に見られずに搬入する必要がある」

「そのための場所って……」

宗介は、指を下に向けた

「地下だ」

千鳥も、その座っているベンチの下の地面を見つめた

「おそらく地下通路が遊園地全体に通され、店と店が繋がっているだろう。そこへは当然、関係者以外立ち入り禁止になっていて、客は入れない。地下なら、人目に触れずに外部からの搬入も容易だ」

「じゃあ、例の銃器密売取引も、地下のどこかでおこなわれてる可能性が高いってことですね」

「ああ。そもそも、こんな人目も多く、ほんわかしたムードの遊園地に、銃器密売なんて、違和感がありすぎだ。その時点で気づくべきだったな」

「どこから、その地下に入れるんでしょう?」

「やっぱり、店の中だろう。カウンター裏の、倉庫室から入れると思うが」

「入れますかね。警察手帳を見せて、すんなり通してくれるでしょうか」

「見せる相手は選ばないとな。これだけでかい遊園地なら、龍神会や表の企業の関係者だけではなく、バイトを雇っているはずだ。バイト員なら、警察に弱く、通してくれるだろう」

「どうでしょうかね。気弱すぎる人だと、関係者にいちいち確認を取ったりするかもしれないですし」

「そこは俺の勘でいこう」

「そこで、勘ですか」

「なんだ? 信じないのか、俺の勘を」

「……いいですよ、もうそれで」

二人は立ち上がった

「行こう」




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