間近でそう言われると、どうも気恥ずかしくなってしまう
「ねえ、さわってもいいよね?」
と、かなめが金網越しに、トマトをさすろうとした
「危ないっ、さわるなっ!!」
「へ?」
すると、そのかなめの指めがけて、トマトが襲い掛かってきた
トマトはツタをくねっと曲げ、バネのような勢いで体を反らし、なにかの液体を吐き出してきたのだ
俺はすぐに駆け寄り、かなめの体を覆うようにして、かばった
トマトから出た液体が、頭上をかすめ、近くの葉っぱに付着する
すると、たちまちその葉はシューシューと溶けて、穴が開いていった
「なな……なによこれっ!!」
いきなりトマトに溶かされそうになったかなめが、叫ぶように俺に聞いてくる
「……トマトだ」
「な、わけないでしょっ! あんな危ない液体吐くトマトがあるかっ!」
「今のは防衛機能が働いただけだ。だから金網で近づかせないようにしておいたのだが」
「……一体あのトマトはなんなのよ?」
「独自に品種改良したトマトだ。厳しい環境を生き残れるよう、様々なDNAを注入した。あの液体で虫を溶かし、栄養にするのだ。そうして自力で成長することができる」
「……あんた、トマトの育ち方をちっとも理解してないのね……」
「そんなことはないぞ。突然変異が起きないように、俺はよくここに確認に来ていた」
「とっくに突然変異起きてるってーの。こいつにとっては、それが世話か」
「なかなか順調に育っている」
宗介はじーんと感銘を受けているかのように、トマトを愛らしい目でみつめている
「……なにか、大きく間違ってるわ」
そう言って、かなめはため息をついた