嘆くかなめをよそに、俺はそのトマトに近づいて、声をかける
「よしよし、怖かっただろう。危険はない、安心しろ」
すると、トマトが宗介の言葉に反応し、体をくねらせた
『ゲ……ギュルゲギョゲー』
「しゃべれるんかい」
かなめのツッコミに、俺は答えた
「意思疎通は大事だ。上官と下士官との連携が上手く機能しないと、戦局では不利だ」
「……どーでもいいけど、どうやってしゃべらせれるようにしたのよ」
「だから、DNAを注入してだな……」
「もういいわ。大方、ミスリル関係のDNAとかなんでしょうね」
と、一人納得しようとするかなめ
「……だが、ひとつ問題が起きてしまった」
宗介の重々しい口調に、かなめは聞いた
「どしたの?」
「……いろいろとこのトマトと話し込んでるうちに、情が移ってしまってな。収穫期はもうすぐなのだが、その時にトマトをもぎ取ってしまわねばならないことを考えると……」
「…………」
かなめは、宗介がひそひそとトマトと会話をしてる姿を想像して笑いたくなったが、そこはなんとかこらえた
END03 トマトEND
すると、うなだれている宗介を気にしてか、トマトが話し掛けてきた
『ゲー、ギョゲッ、ギョゲー』
すると、それを聞いた宗介が顔を上げた
「お前……」
『ゲッ、ゲッ。ギョゲー』
「……すまない」
そう言って、トマトをぎゅっと抱きしめた
「ああ、そう」
なんの感情も込めず、かなめはそう言って遠くからそれを眺めていた
「……あたしとしては、そのトマトの不気味なしゃべり方って、どーにかなんない? 逆にさっさともぎ取ってやりたくなるんだけど」
「千鳥……本気で言ってるのか?」
宗介が、涙をぬぐって、こっちを信じられないような目で見る
「……ははは」
……どうやら、ソースケは本気のようだ
かなめはもうなにも言わないことにして、その場を離れることにした
そんなかなめを差し置いて、トマトと宗介はまた抱擁し合っている
『ギョゲッ、ギョルゲー』
「すまない。俺としても、辛いんだ……」
これを何度も繰り返し、抱きしめ合っている
「一生やってろ」
かなめはそう言い捨てて、校庭から去っていった