よし……
この組み合わせでいいだろう
「千鳥……もういいぞ」
「ん……」
目をあけて、俺の手元のパンを見る
食パンを2つ折りにしていて、中身は見えない
「へえ、食パン? 中身はなに?」
「それは、食ってからのお楽しみだ」
そう言って、手渡した
「うん……」
かなめは言われるがままに、その食パンをかじった
「んむ……」
…………
………………
数分の沈黙
かなめの動きは完全に止まっていた
な……なにこの味……
なにか……とてもパンとは言えないこう……変な、ねっとりとした、それでいてぐちゃぐちゃな……どろどろな……
はっきり言って、マズかった
「……うっ」
吐き気が催してきた
だが、正面の宗介は、じっと期待の目でこっちを見ている
宗介が、心をこめてつくってくれたパンだってのは分かる
せっかくつくってくれたのだが……
ああ、目の前が暗くなって……地獄の不味さを競うようなハーモニーが奏でられてるような……
「千鳥。どうだ?」
実に、純粋な目でかなめを見ている
かなめはこれをマズイと言えなかった
「う……うん」
美味しいわよ、と言ってあげたいが、言葉にならなかった
代わりに、さらにパンをかじっていく
これでおいしいと想ってくれるかな……
ああ……
なんか……もう……
口の中の感触に耐えられない……
「…………」
かなめはぴくりとも動かなくなった
「……千鳥?」
その違和感を感じて、かなめの体をゆさぶる
「…………」
まったく反応が無い。それどころか、白目をむいて泡を吹いていた
「千鳥っ!!」
END07 パン失敗END
ピーポー ピーポー
それからかなめは救急車に運ばれ、一週間の入院が必要だったそうな