「……千鳥。受け取ってほしいものがある」
「……謝りにきたわけじゃないの?」
「…………」
やはりまだ怒っていた
「……すまない」
「言われてからじゃないと、謝れないの? アンタはっ」
「それも、すまん」
かなめはまだこっちを見ずに、冷たく言い放った
「もう……なにも聞きたくない」
そして、外の方に景色を見る
「……渡したいものは、受け取ってくれないのか?」
「ごめん。悪いけど、全然受け取る気分じゃないよ。もういいから……向こうに行って」
「……そうか……」
宝石をポケットにしまう
今日は、もはやダメなようだ
残念だが、間に合わなかったな。ま、自業自得というものか……
決して振り向かない千鳥を屋上に残し、俺は出て行った
END09 ヨリ戻し失敗END
とぼとぼと歩いていると、いつの間にか俺は河原へと足を運んでいた
「うまくいかないものだな……」
ポケットに入れておいた紫色の宝石を眺め、ポツリとそうつぶやいた
その宝石は、宗介を反映するように、もはや夕日に照らされても輝きを失っていた
「まるで今の俺のようだ」
すると宗介は、その宝石を振り上げ、河に向けて放り投げた
宝石は弧を描いて、ちゃぽんと着水すると、そのままゆっくりと沈んでいった
「持っていたら……思い出してしまうからな」
宗介は背中を丸め、ゆっくりと帰るべき場所へと帰っていった