「……くん」
「……相良くん」
真っ暗闇の世界のどこかから、俺を呼ぶ声がする
「う……千鳥か……?」
暗闇の中に、手をつっこむ
すると、手になにかの感触があった
「きゃっ」
そこで、ようやく目がさめた
すると、目の前にはカーテンで仕切られた個室に、天井一面が広がっていた
そしてすぐそこには、常盤恭子がいた
俺の手は、その常盤のおさげをつかんでいたのだ
「い……痛いよ相良くん。放して〜」
少し涙目になって、そう懇願する
「す……すまない」
すぐに手を放すと、恭子はホッとしたように、おさげをなでた
「……うん、いいよ。気にしないで。ありがちな胸をさわられるってパターンじゃなかったしね」
「…………?」
今の発言はよく分からなかったが、とりあえず許してくれたようだ
「……ここは?」
「保健室だよ。あ、今こずえ先生は出払ってるの」
「……保健室?」
「うん。なんでも相良くんが屋上でのびてたみたいでね。小野寺くんが運んでくれたらしいよ」
「そうか。すまない。迷惑かけたな」
「うん。じゃあたし、教室戻るね。もうすぐ昼休みだから、ゆっくり寝てて」
そう言って、濡れたタオルを横の洗面器にかけて、保健室を出て行った
常盤は本当にこういう世話をよくしてくれる
ありがたいものだ
そういえば……
千鳥はあれからどうしたのだろう?
宗介はポケットの中身を探ってみる
すると、中に入っていた紫色の宝石が出てきた
よかった。無事だったか
それにしても、これを渡しそびれてしまったな……
これは、今日がある記念日なので、そのために用意したものだ
なので今日中に千鳥に渡さないと、意味がない
それになぜか怒らせてしまったな
それも謝っておかねば
保健室にずっといるわけにもいかん
宗介はベッドから身を起こし、保健室を出た